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東京オリンピックという一大イベントで様々な利権争いが勃発

東京都知事も小池百合子知事となり、東京オリンピックのスケープゴートのように豊洲一場移転問題にすり変わりワイドショーを賑わしているけど、これもまた東京オリンピック開催によって注目された歪なのでしょう。意地悪バアさん(青島幸男氏)が都知事だった頃は「知事なんて誰でもいいんじゃないの?」という雰囲気だったのですが時代も変わりましたね。

東京都知事は兎にも角にも全国区の知名度がなければ当選などできず、逆に出馬さえすれば名前が全国区になるという異例の地域です。

そんな東京でオリンピックが開催されるのですから、ロゴデザインひとつですら大騒ぎになるのは致し方ないことだったのでしょう。

東京オリンピックのロゴデザインは盗作だったのか?

ロゴのデザイナー、オリビエ・ドビ氏によって「盗作であることは明白」と主張し、佐野さんがデザインしたエンブレムの使用停止を求めましたが、パクリは立証されないまま最終的には採用されないという結果になりました。

盗作疑惑がうやむやのまま佐野研二郎氏は「パクリデザイナー」としての名を馳せてしまいました。しかしながら同じデザイナー(の端くれ)として感じているのは佐野研二郎氏はデザイナーとしてプロ中のプロです。受賞歴だけ見てもその凄さが伝わるでしょう。

佐野研二郎氏の受賞歴

  • みうらじゅん賞(ニャンまげ)(1999)
  • ONE SHOW DESIGN(N.Y) 金賞(2015,2013)銀賞(2015,2014,2013,2008,2008,2010,2010)
  • BRITISH D&AD金賞(2014)銀賞(2015,2014,2010,2008)/銅賞(2010,2009)
  • NY.ADC金賞(2014)銀賞(2014、2003,2003)/特別賞(2001,2004,2005,2005,2006)
  • 東京ADC賞(2002,2002,2003)
  • 東京TDC賞(2002)
  • JAGDA 新人賞(2002)、
  • 朝日広告賞 部門賞
  • 毎日広告デザイン賞 優秀賞
  • 日経広告賞、京都新聞社賞
  • ポスタートリエンナーレトヤマ銅賞(2010)
  • NEW YORK FESTIVAL
  • グッドデザイン賞
  • 日本パッケージデザイン金賞/銀賞/銅賞/特別賞
  • JRポスターグランプリ 銀賞/特別賞
  • スポニチ広告賞グランプリ
  • 2013毎日デザイン賞
  • 第17回亀倉雄策賞(2014)

デザインは創造的な仕事ではなく結果を出すのが仕事

多くの方はデザインとアートを混同して考えているかもしれませんが、全くの別物です。

アートとデザインの違いを端的に説明すると

アートは「宗教」

アートとは「好き」と「嫌い」の価値観に訴えかけるものです。好きな人にとっては作品の中から思想、生き方、概念、哲学などを汲み取り、「魅力的」な理由を様々な形で解釈しようとします。画家・音楽家・演劇などが代表的でありますが、広義でいえば「漫画家」「小説家」「芸能人全般」もこの部類に入るでしょう。

デザインは「法」

デザインとは最大公倍数の人に「伝わる」ものを作る工程です。その上で最も重要なのが「一目で伝わる伝達力」が求められます。デザインの役割を最も顕著に表しているのが「時計」と「信号」です。時計はたった二つの針で「時間」という複雑な情報を世界中に瞬時に伝えることができます。「信号」も赤と緑というたった二つの色で群集を誘導する役割をもっています。

デザインは深層心理にある共通認識を探る作業でもある

デザインをする上で重要なのが感情・イメージ・行動を推理し一つの方向に導く事にあります。一般的にはターゲットとなる年齢・性別・趣味趣向から、その人が普段目にしていそうな物、興味をもっている事柄などから推測し構築していきます。

その上で、一目で「これは何か?」が「伝わる」ものがデザインです。瞬時で商品をイメージさせる上で最も効果的なのが配色になります。

例えば夜中のロードサイドで赤い看板を見かけ「ラーメン屋かな?」と想像し急にラーメンが食べたくなった事などありませんか?

逆に赤い看板なのに「病院」だったとしたらどうですか?ものすごく違和感・不快感を感じませんか?

言葉は悪いかもしれませんがデザインにおいて「パクる」事は深層心理にある共通認識を利用して「瞬時に伝える」手段として有効な手段なのです。へたに独自性を追求すれば何をしたいのかわからないものになってしまうのがデザインです。

その上で、今回正式に決まった東京オリンピックのロゴと比較してみましょう。

デザインコンセプト

歴史的に世界中で愛され、日本では江戸時代に「市松模様(いちまつもよう)」として広まったチェッカーデザインを、日本の伝統色である藍色で、粋な日本らしさを描いた。
形の異なる3種類の四角形を組み合わせ、国や文化・思想などの違いを示す。違いはあってもそれらを超えてつながり合うデザインに、「多様性と調和」のメッセージを込め、オリンピック・パラリンピックが多様性を認め合い、つながる世界を目指す場であることを表した。

作者である野老朝雄氏はアーティストとしてご活躍されている方だそうです。比較してみると前述にも記載したアートとデザインの違いが如実に出ています。日本の伝統=市松模様という発想は良いのですが、日の丸という要素を外してしまったため何のモチーフなのかわかりません。

試しに五輪とTOKYO2020という文字を伏せて見比べてみるとわかると思いますが、二つを初見で見比べて「どちらが東京オリンピックのロゴか?」と尋ねたら間違いなく佐野氏のデザインしたロゴと答えるでしょう。

 

リスモとiTunesに見る佐野研二郎氏の才能 

リスモとiTunesが似ている事もネットやワイドショーなどで叩きの対象になっていましたが、この戦略がもたらした功績はかなり大きなものだと思います。当時はiPhoneとiPadはソフトバンクの独壇場でした。

そのため同様のサービス、それ以上のサービスでも見向きもされず。ソニーという音楽コンテンツの最大手がiTunesに負けるという状況でした。

iTunesのブランドイメージ「かっこいい」に「カッコイイ」でぶつけずに「かわいい」で対抗した点と、同色を使う事で「音楽コンテンツ」であるという情報を瞬時に伝えた点です。これをパクリと呼ぶのは簡単ですが、先述にも申し上げたように色による親和性は重要な要素です。

しかもこれは悪意ある人たちが同系色の広告パターンを持ち出しパクリと断定していますが、そもそもiTuneはビビットなカラーにシルエットというテーマでやっていたためパクリではありません。もしもパクリと断定するならばビビットな色にシルエットという点でしょうか?しかし真ん中の画像などはビートルズのABRORDのぱくりですよね?

佐野研二郎氏の独自のセンスが生んだ東京オリンピックロゴデザイン

佐野氏のデザインの真骨頂とも言えるのが円と幾何学をモチーフにしたシンプルなデザインです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つや姫は山形県がブランド化するため取り組んだプロダクトの一つで佐野研二郎がそのブランドデザイナーに起用されました。

ロゴには米どころ山形と日本(日の丸)で「新しい和」をイメージする以下の要素を織り込んでいます。

  • 米の「※」という記号
  • 山に囲まれた山形の大地
  • 朝日(日の丸=日本)

つや姫はブランド化に成功し手頃で美味しいブランド米としてその地位を確立しています。
元々佐野氏のデザインはシンプルさと女性的な要素が強く、さらにいえば深層心理に訴えかけるためにあえて親和性の高い要素を入れる傾向にあります。

ビエ・ドビ氏によって「盗作であることは明白」との主張に対し、「デザインに対するコンセプトがまるで違う」と切り返したのもうなずけます。

舛添知事を辞職に追い込むための政治的理由ではないか?

舛添知事が不正な使い込みで辞職に追いやられましたが、そもそもが東京オリンピックのエンブレム問題はこの政治的な理由の布石だったのではないかと勘ぐってしまいます。

ブランド成功請負人の才能はもっと評価されるべき

佐野氏の功績をみるとどのプロダクトも「見たことある」「聞いたことある」ものばかりです。これは強く印象に残っているからであり、ブランディング成功請負人としての責務をしっかり果たしてきた結果でもあります。

なぜかプレゼン資料までがパクリ叩きの要因になっていましたが、プレゼン資料を現地まで撮影に行って加工してという作業をしていたら費用がいくらあっても足りません。そもそも東京オリンピックロゴコンペは採用されて100万円、応募条件は世界的なデザインコンテストで2つ以上の受賞歴という条件でした。

これは時間とコストに到底見合う報酬ではありません。

惜しむべきは東京オリンピックの広報に佐野氏が関われない事です。

前述にも述べたように佐野氏の手がけたブランディングはことごとく成功へと導いています。

こうした大きなプロダクトで成功できる人といえば、佐藤可士和氏か佐野研二郎氏くらいしか浮かびません。勢いでいえば佐野氏が筆頭でしたが、そのくらいの逸材を手放してしまった事で、東京オリンピックへの不安は募るばかりです。

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